2025年10月16日

  • 受賞・表彰

山口誠二教授(生命医科学科)が日本金属学会第48回技術開発賞を受賞しました

生命医科学科の山口誠二准教授が、日本金属学会より第48回技術開発賞を9月17日に共同研究者らと共同授賞いたしました。

テーマ名:積層造形による患者適合型チタン製体内固定プレートの開発と製品化
受賞者:角谷達也 植野高章 中野旬之 中島世一郎 山口誠二 松下富春 福岡克典 北垣 壽 北山青空 寺内俊太郎

受賞の報告

本技術は、交通事故や疾病の治療に伴い欠損した下顎骨を再建する手術に用いられるチタン製人工骨を、患者のCT画像データを基に下顎骨の形状に正確に適合するよう3D積層造形技術によって造形し、さらに中部大学独自の生体活性処理技術を施して骨との親和性を高めた患者適合型体内固定プレートを製作する技術です。この技術により、従来のように平板状の金属板を複雑な骨形状に合わせて手作業で加工する必要がなくなり、術後の審美性を保ちつつ、加工による金属疲労を原因とする破折を防止できます。
本技術は2022年8月から臨床で使用され、2025年8月末での適用症例数は340症例、販売額は2億8000万円(償還価格ベース)に達しています。これらの成果が高く評価され、2025年9月17日には以下の研究・開発メンバーにより日本金属学会技術開発賞を受賞しました。受賞者は、大阪医科薬科大学の植野高章教授、中島世一郎講師、金沢医科大学の中野旬之教授、中部大学の松下富春元教授、帝人メディカルテクノロジー株式会社の福岡克典氏、大阪冶金興業株式会社の角谷達也氏、北垣 壽氏、北山青空氏、寺内俊太郎氏、及び中部大学の山口誠二准教授です。
本技術は、今後も医療現場での下顎骨再建手術の質向上と、患者一人ひとりに最適化された治療の実現に貢献していくことが期待されます。

技術紹介

 患者適合型体内固定用プレートは、画像撮影(CTのスライス厚は0.8mm以下)を行った後、ベースとなる設計指示書とともに画像データ(DICOM形式)を設計技師に送付します。これらのデータを基に、3次元的に構築された固定プレートデータを用いて、Web上で医師と設計者が3次元手術シミュレーション画像を共有します。その際、強度を担保するための必要条件を満たしながら、プレートで覆う範囲や周囲組織との位置関係、スクリューホールの位置など、細部に至るまで検討を行い、最終的なプレートデザインを決定します1)。デザイン承認後は、微細加工に優れた選択的レーザー溶融法によって造形されます。造形後、骨と接触する内面には生体活性処理を施し、約2週間程度で納品されます(図1)。
生体活性処理には、中部大学で開発された独自の表面処理技術である混酸-加熱処理が採用されており、骨組織との親和性を高める効果が期待されます。この処理を施したチタン金属の表面には、正に帯電した酸化チタン層が形成され、擬似体液中でリン酸イオンおよびカルシウムイオンと結合して、骨の無機成分に近い骨類似アパタイト層を形成します。また、表面にはマイクロスケールの微細な凹凸構造が形成されており、酸化チタンのアパタイト形成能と相まって細胞活性を大きく向上させる効果が確認されました。処理後のチタン金属は、動物実験において早期に骨と結合することが示されています2)。

謝辞

本研究はAMEDの令和3年度医工連携事業化推進事業(研究開発課題名:「下顎骨形状に適合し骨結合能を有する新たなレーザー積層造形チタンデバイスの開発・事業化」)の支援を受けました。ご支援に感謝申し上げます。

参考文献
  1. 井上和也、植野高章、日本口腔外科学会雑誌、2023年 69巻 11号 p.486-492
  2. N. Imagawa et al., Materials 2020, 13, 5104
図1 (a)患者適合型体内固定プレート
図1 (b)術後パノラマ画像写真1)
図2混酸-加熱処理を施したチタン金属の骨結合機構。
図3ラット頭蓋骨に4および12週間埋入した無処理および混酸ー加熱処理チタンのインプラント-骨界面の組織観察(結果2)。
赤色:類骨、薄桃色:繊維組織、薄緑色:石灰化骨。