吉村 和也

お知らせ

    「生物の代謝」をバイオサイエンスの手法で理解し、食料問題の解決や機能性食品の創出へ

    食品栄養科学科
    吉村 和也

    なぜ植物はビタミンCを多く含むのか?

    吉村研究室-1

    なぜ植物は葉や果実にビタミンC(アスコルビン酸)を多く含むのでしょうか?私たちは体内でビタミンCを合成することが出来ないため、常に食品から摂取し続けないといけませんが、決して私たちに食べられるために植物はビタミンCを蓄えているのではありません!なぜ植物は日に当たっても日焼けしないのでしょうか?決して日陰に隠れている訳ではありません!

    環境破壊、食料問題・・・

    吉村研究室-2

    植物は私たちにとって最も主要な食品材料です。しかし近年、地球規模での環境破壊による温暖化や緑地の砂漠化が進行しており、耕地面積の減少や生育不順による収量低下が深刻な問題となってきています。一方近年、食生活が我々の成長や健康に及ぼす影響が注目されてきており、機能性に富むさまざまな栄養成分が明らかになってきています。その様な状況下で、もし劣悪な環境下でも生育可能で、かつ優れた栄養特性を持つスーパー植物を作ることができれば、食糧危機や健康問題を克服するための大きな手段となります。

    元来、植物は動物と異なり移動することが出来ないため、時々刻々変化する環境要因(環境ストレスと呼びます)に対して、その場で耐え抜いていかなければなりません。それゆえ、植物はそれらの環境変化に対抗するさまざまな手段を進化過程において発達させて来ています。また、植物は我々ヒトにとって栄養的に有用な多くの物質を多量に含んでいます。そんな植物が元来有する優れた機能をバイオサイエンスの手法で明らかにし、それらの機能を高めることができれば、栽培面/栄養面で優れた植物を作り出すことが可能となります。

    キーワードは活性酸素

    そのためのキーワードは活性酸素です。活性酸素とはその名の通り活性化された酸素であり非常に有毒な物質ですが、私たちヒトを含めて呼吸により酸素からエネルギーを生成している生物にとって、活性酸素の生体内での生成は避けることが出来ません。実は、さまざまな環境ストレスが植物を枯死させる原因には、全てのストレスに共通して活性酸素の蓄積が関係しています。

    さてここで文頭の疑問が解決されます。なぜ植物はビタミンC(アスコルビン酸)を多く含むのでしょうか?なぜ植物は日焼けしないのでしょうか?ビタミンCは活性酸素の毒性を打ち消す優れた能力の有しているため、植物はビタミンCを多量に溜め込んで、強い光をはじめとするさまざまな環境ストレスに対抗しているのです。ですので、私たちは植物を食品として摂取することで、それらの優れた物質の分け前をもらっているだけなのです。

    吉村研究室では、ビタミンCをはじめとして、植物が有する活性酸素に対抗するさまざまな因子やそれらの働きを調節する因子の機能や役割をバイオテクノロジーの技術を駆使して明らかにし、将来的には劣悪な環境下でも生育可能で、かつ優れた栄養特性を持つスーパー植物を作ることを目指しています。詳しくは研究室紹介のホームページをご覧ください。

    研究は楽しく!

    「研究は楽しくやりましょう。」これが私のモットーです。研究の多くはうまくいかないものです。だからこそ楽しく取り組んで、成功したらメンバーみんなでその喜びを分かち合える環境づくりをめざしています。バイオサイエンスと聞けば難しく感じるかもしれませんが、大丈夫です。食品栄養科学科では研究に必要な知識や技術を基礎から応用まで徹底的に学ぶことが出来ます。その過程で最新技術に触れながら、是非バイオサイエンスのおもしろさを実感しましょう。皆さんの入学をお待ちしています。

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