2021年6月のメッセージを公開します

お知らせ

    6月のメッセージ

    今日は断続的に雨がパラパラと降ったものの、何とか耐えることができる暑さでした。梅雨で不安定な天候が続いていますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。21時現在、web情報によると、愛知県の「新型コロナウイルスの感染者」数は、53人との報告でした。
     昨日(6月29日)、愛知県の大村知事は、14の市と町が対象となっている新型コロナウイルス感染症における「まん延防止等重点措置」について、7月3日から4つの市に縮小することを明らかにしました。愛知県は、現在対象区域となっている14の市と町のうち、春日井市など11の市と町を外します。 一方、名古屋市、豊橋市、小牧市は継続し、新たに蒲郡市を、対象区域とします。中部大学が立地する春日井市は、「まん延防止等重点措置」が外れますが、まだまだ予断を許さない状態です。感染対策を続けていきましょう。

    2021年6月センター長メッセージ1

     さて、新型コロナウイルスのワクチン接種が本格的に始まりました。しかし、日本のワクチン接種は世界に比べ、進んでいるとは言えないようです。知人の情報によると、アメリカでは12歳の子どもも接種を終えたと教えてくれました。そのアメリカでは、6月中には医療従事者を除いて、ソーシャルディスタンスやマスクの着用の義務化が解除されるところとのことです。
     そんな中ですが、新型コロナワクチンに関する知見は増え続けています。現在、国内で接種されているのはファイザー/ビオンテック社とモデルナ社が開発したmRNAワクチンという種類の新しい技術を用いたワクチンです。

    2021年6月センター長メッセージ2

     原理を簡単に説明します。mRNAは、いわば「設計図」にあたります。ワクチンが接種されると、mRNAは注射部位近くのマクロファージに取り込まれ、スパイク蛋白を作るように指示し、その後、スパイク蛋白がマクロファージの表面に現れます。これを身体内で翻訳システムが行っています。このスパイク蛋白に対する抗体が作られたり、T細胞を介した免疫が誘導されることで、新型コロナウイルスに対する免疫が得られるのです。ワクチンの中には生きたウイルスは入っておらず、また遺伝情報を体内に接種すると言っても、それが人間の遺伝子の情報に変化が加わることもありません。
     このワクチンを開発したのが、カタリン・カリコ博士です。カリコ博士はハンガリー出身の科学者ですが、アメリカに渡り、遺伝情報の1つである「mRNA」の研究を行いました。しかし、研究成果はなかなか評価されず、40年にわたる研究生活は苦難の連続だったそうです。当時同僚だったドリュー・ワイスマン教授と、2005年に今回のワクチンの開発につながる革新的な研究成果を発表しました。しかし、注目を集めることはなく、2013年にドイツの企業ビオンテックにうつりました。

    今回の開発は何が素晴らしいのでしょうか?それは、mRNAが体内に入るとすぐに分解され、炎症反応を引き起こします。そこで、カリコ博士らはこのmRNAを構成する物質の1つを置き換えると炎症反応が抑えられることを発見しました。この技術を用いて2020年、新型コロナウイルスのワクチンが開発されたのです。

     先にも書きましたが、2005年に今回のワクチンの開発につながる革新的な研究成果を発表しています。今回の新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンは、これまでにないワクチンなのですが、全く新しい技術というわけではありません。多くの研究者たちが何十年も前からmRNAワクチンを研究しており、実用には至っていませんが、他のウイルスなどでmRNAワクチンの研究が行われています。何十年にもわたるmRNAの研究では、私が調べた限り、長期的な副反応(作用)は認められていません。

     ウイルスを研究対象として、その研究には分子生物学を使っています。今回のワクチンはmRNA。私はある程度原理を理解し、どこに打てば良いのかもわかっています。自身の身体には、多分、正常な翻訳システムと免疫システムが備わっているはずです。しかし、接種券が・・・。心と身体は準備万端なのに、自治体からの接種券を首を長くして待つとは、無情の何ものでもありませんね。

    学生サポートセンター長 伊藤 守弘