蛍光顕微鏡

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    蛍光顕微鏡

    直接目で見られないほど小さな生物や細胞を拡大し、その微小構造を観察する道具として、顕微鏡は昔から生物学に欠かせないものです。本学にはさまざまな顕微鏡が備わっており、目的によってそれらを使い分けております。ここで紹介する蛍光顕微鏡は、対象を拡大するといった顕微鏡の基本的な目的に加え、見たい分子だけを選択的に色分けすることができます。目的の分子が生物体内のあるいは細胞内のどこに存在するか、興味ある遺伝子が生物体内で、どこで(場所)、いつ(時期)、どれだけ(量)発現するのかを調べることが可能なのです。

    蛍光物質とは、照射した光を吸収して再び放出する物質であり、最初に照射した光を励起光、続いて放出される光(励起光よりやや長い波長をもつ)を蛍光といいます。生物学の研究では、励起光を当てたときに赤色や青色といった特定の蛍光を効率よく発する色素をよく利用します。最近では、イソギンチャクやクラゲが持つ蛍光タンパク質をコードする遺伝子を利用し、自分の興味ある遺伝子と蛍光タンパク遺伝子を融合させることで、自分の興味ある遺伝子の発現する場所、時期、量を視覚的に捉えることが可能となりました。

    自分が知りたい分子が細胞内でどのような形をしているのかを知るために、その分子を蛍光標識しますと、透明な細胞内で目的の分子が蛍光を発して浮き出てきます。また、自分が調べたい遺伝子と蛍光タンパク遺伝子を融合して生物に組み込むと、その遺伝子の発現とともに蛍光タンパクも発現し、その蛍光像から目的遺伝子の発現パターンが調べられます。

    それでは、線虫(Caenorhabditiselegans)を用いた実験に沿って、一緒に蛍光顕微鏡での観察をしてゆきましょう。線虫由来のGST(GlutathioneS-Transferase)をコードする遺伝子に、イソギンチャク由来のRFP(RedFluorescenceProtein)という赤色蛍光タンパクをコードする遺伝子を実験室で融合させます。GSTをコードする遺伝子からはふつうGSTタンパクのみが発現するのですが、RFPとの融合遺伝子を作製することで、GSTとRFPとが融合したタンパク質が、つまり赤色に蛍光を発するGSTが発現します。557nナノメートル波長の励起光を当てることで、585nm波長の赤色蛍光を捉えることができるのです。

    この融合遺伝子を組み込んだ、遺伝子組換え線虫を作製します。普段は励起光を当てても蛍光を発しませんが(図A)、毒物を与えることで体中が真っ赤になってしまいました(図B)。GSTは解毒酵素であるので、毒物がないときは発現しませんが、毒物が体内に入ったときこれを解毒しようとGSTがたくさん作られるのです。

    赤色蛍光タンパクであるRFPの他にも、緑色蛍光タンパクGFP(Green Fluorescence Protein)、青色蛍光タンパクCFP(Cyan Fluorescence Protein)などもあり、一度にたくさんの蛍光タンパクで染め分けることが可能です。