第47回創発セミナー
「知の脱植民地化」を考える ―モノの返還からデータの植民地主義、そして…

日時:2026年9月1日(火) 午後3時30分~午後5時00分
場所: 中部大学アクティブホール
Zoom配信
講師:井野瀬久美惠(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構・監事、専門:イギリス近代史・帝国史)
概要:
21世紀に入って以降、欧米やオーストラリア、ニュージーランド、カナダなどの博物館では、植民地時代に収奪したモノをめぐる「返還」の議論が続いている。19世紀末にイギリス軍がナイジェリア南西部のベニン王国から収奪した美術品、通称ベニン・ブロンズはその典型である。また、2024年のベルリン国際映画祭コンペティション部門で最優秀賞(金熊賞)に選ばれたドキュメンタリー映画「ダホメ」(マティ・ディオップ監督)は、同じく19世紀末にフランス軍に制圧されたダホメ王国、現ベナン共和国への美術品返還の模様を描いた。こうした動きは、政治や経済、社会とは異なる、知(知識・情報)のレベルにおける脱植民地化として注目されている。
なかには、どこに返せば「返還」したことになるのか、曖昧な事例からは「所有」争いも生まれている。あるいは、モノの「所有権」を変更し、「正当な所有者からの貸与」という形で博物館展示を続ける、いわゆる「バーチャル返還」も少なくない。
これら「返還」の多くには、「デジタル・ベニン」(https://digitalbenin.org/)のように、収蔵品をデジタル化し、そのデータを誰にでも見られる形で公開する動きが認められ、それが、新たな問題を浮上させている。誰がデータを収集・所有・管理し、アルゴリズム化するのか。誰がデータ利用のルール(例えば公開・非開示)を決めるのか。誰が正当なデータ所有者なのか。と同時に、生成AIが学習するネット上の膨大な過去データが、欧米中心の価値観を引きずっていることの問題性も指摘されている。
どうも、収奪したモノを返還すれば植民地主義が終わるわけではなさそうだ。博物館における「文化財返還」の動きを追いながら、「データ植民地主義」と呼ばれる新たな「知の植民地化」を問い、「知の脱植民地化」とは何かを捉え直してみたい。それは、アイヌという先住民族をめぐる「わたしたちの問題」とも確実につながっている。
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<問合先>
中部大学創発学術院
chubu-cuaes@fsc.chubu.ac.jp