岩崎 雄吾

生物のしくみを利用したものづくりを通して、社会に貢献しよう!

お知らせ

    応用生物化学科
    岩崎 雄吾

    酵素って何だろう?

    みなさんは「酵素」という言葉を聞いたことがありますか?みなさんが食べたものは、体の中の酵素の働きで分解され、栄養として吸収されます。吸収された栄養は、酵素の働きでエネルギー物質や、体を作るための物質に変換されていきます。生物の体の中で起きるほとんどの化学反応は酵素によるものです。では、酵素を生物の体から取り出したらどうなるでしょう?生物から取り出しても、酵素は「触媒」としてちゃんと反応を起こします。ですから、必要に応じていろいろな酵素を使い分けることで、有用物質をつくったり、不要物質を除いたり、注目する物質を測ったりすることができるのです。

    実際、私たちの生活のさまざまな場面で酵素が利用されています。例えば、みなさんの家にある洗濯洗剤には汚れ(アブラ汚れやタンパク汚れ)を分解するための酵素が配合されています。食べ過ぎの時に飲む胃腸薬にも酵素が入っていて、食べ物の消化を助けます。冷蔵庫の清涼飲料には甘味付けに「果糖・ぶどう糖液糖」が含まれますが、これも酵素によってつくられています。チーズは牛乳が原料ですが、キモシンという酵素なしにはチーズはつくれません。健康診断で血糖値やコレステロール値を測りますが、これも酵素を使って測ります。コロナ検査のためのPCRでは、ウイルスの核酸を酵素で増幅して検出します。

    このように、身の回りにはいろいろな酵素が利用されています。酵素はとても穏やかな条件で、決まった物質に対して決まった反応だけを起こすので、家庭用品や食品加工、医療での各種診断ととても相性がよいのです。

    バイオによるものづくり

    私たちの研究室では、酵素や微生物を利用したものづくりを研究しています。いわゆる「バイオによるものづくり」です。具体的には、機能性の脂質類を効率よく合成する方法の開発を行なっています。通常、脂質(や油脂)は作物や魚から得ることができます。これを酵素反応や微生物反応によって変換して機能と付加価値を高める、というのが私たちの研究目的です。このように機能を高めた脂質は食品・化粧品、医薬品原料や、研究試薬としての利用が可能です。また、酵素反応を効率よく進めるため、酵素や微生物そのものを「品種改良」してスーパー酵素やスーパー微生物を作り出すことにもチャレンジしています。

    生物や化学は苦手でも

    このように、私たちは酵素反応や微生物反応を工学的に応用するための生物工学的な研究を行なっています。生物工学とは、生物のしくみを物質生産や、環境保全・修復に応用することで社会に貢献する学問です。応用生物化学科での勉強は生物や化学が基本になりますが、もし今、生物や化学が苦手でも、ものづくりが好きな人はこの学科を考えてみてください。一緒にスーパー酵素やスーパー微生物を開発して、社会に役立つものづくりをしませんか?