金丸 京子

〜微生物からの学びを将来の糧に〜

お知らせ

    応用生物化学科
    金丸 京子

    高校生へのメッセージ

    高校生の皆さん、毎日楽しい学校生活を送っていることと思います。今の貴重な時間の中で、少しずつ将来の自分のことを夢描きながら過ごしてください。10年後、20年後どんな自分であってほしいですか?

    毎日が楽しすぎて、そんな先のことを考える暇はないかもしれませんね。おそらく、その時々において、自分にとってベストの選択をしていけば、若い高校生のみなさんがわざわざ何十年も先のことを今思い描かなくても、気がつけば、自分にとって一番いい道を歩んでいること間違いありません。

    なにかの選択を迫られたとき、これで間違いない!と自分で自信を持って選択できるときはいいのですが、選択できないときもあるはずです。そんなとき、大きくみなさんの判断に影響するのが、家族や先生や友達など周りの人からのアドバイスだったり、偶然にも観たテレビ番組だったり、読んだ本だったりします。高校生の皆さんも、これまでにそんな経験がある人もいるのではないでしょうか。私ももちろんあります。ずいぶん歳をとった今でもあります。自分の子どもに、どう思う?って、意見を聞くときもあります。

    私が高校生のみなさんと同じ年齢の頃を思い起こしてみると、中学の数学の先生のひとこと(この先には洋々とした海が広がっている)を励みに、わたしは大学の受験勉強を頑張ったり、なにか辛いことにぐっと踏ん張ってのり切ろうとしていたことを思い出しました。残念なことに、その言葉をどんな状況で聞いたかを今ではすっかり忘れてしまいました。中学の先生も何気なく私に言ったのだと思います。しかし、私の人生に大きく影響したひとことで、今でもいい言葉だなあと時々思い出します。

    中学の先生のひとことが私の心にずっと残ったのは、本当に偶然かもしれません。もしかしたら、ぼんやり聞き流していたかもしれません。自分の身近で起きていること、社会の状況がどうなっているのか、自分にとって重要な情報を見落としていないか、年齢に関わらず、いつもアンテナをしっかりはって見逃さないようにしないといけないですね。昔と比べ、現代はさまざまな情報が溢れていますから、なおさらたいへんです。

    もう一つ私の人生に大きく影響したのが、やはり進学した大学での授業や人との出会いです。自分の専門科目と全く関係のない教養科目の中には、単位を取得するためという名目がなければ聴くことのない授業があります。でも、聴いてみると意外と面白かった記憶があります。みなさんが大学に進学したら、きっと私と同じ経験をすると思います。中部大学には、科目名だけでも興味を誘われる授業がありますから、どうぞ楽しみにしていてください。肝心の専門科目では、大学1年生のときに受けた微生物学に感銘を受けました。今私が携わっている分野です。当時は、生物のさまざまな現象を遺伝子やタンパク質のレベルで解析する、いわゆる分子生物学が注目され、実験的に扱いやすい大腸菌を用いて確立されていきました。私が受けた微生物学の授業の中では、担当教授が、ラムダ−ファージが大腸菌に感染する顕微鏡写真を見せながら解説してくれたとき、目では見えないミクロの世界でこんなことが起きているのかと衝撃を受け、どんなタンパク質因子がどんなふうに働いてこの現象が起きるのか知りたいと思いました。微生物学ってすごいと感動しました。

    さまざまな方面にアンテナをはっていろんな知識を吸収しようと、今、目をキラキラさせている高校生の皆さん、その気持を大学でもぜひ継続して、キャッチした知識を将来の自分の糧にしてください。今度は、わたしがみなさんの情報源になれるように、皆さんに微生物学の面白さを授業で伝えたいと思います。私が中部大学で研究しているのは、発酵食品で利用されているカビの環境応答という分野です。味噌や醤油、日本酒を生産するときに使用されている実用株が、発酵食品の生産環境で、どのように適応して生育しているかを研究しています。それぞれのカビの特性を研究して、新しい発見の感動をいっしょに分かち合うことができたらうれしいです。