鈴木 孝征

お知らせ

    高校生の皆さんへ

    応用生物化学科
    鈴木孝征

    私は子供のころから生き物が好きで、川や田んぼでザリガニなどを捕まえて遊んでいました。「野生の王国」とか「わくわく動物ランド」などのテレビ番組もよく見ていました。一方で、工作や機械の分解なども好きで、ものが動くしくみにはとても興味を持ちました。なので、高校生まではエンジニアになることを夢見ており、漠然と工学部への進学を考えていました。

    私が大学で生物の勉強をしようと考えたのは高校2年生のときでした。それまで学校で教えられていた生き物のしくみは、ロウソクが燃えることに例えるだけの、中身の全然わからないものでした。それが、高校の授業でグルコースがピルビン酸と水と二酸化酸素に分解され、その過程でATPが合成されると教わり、生物の生きるしくみが分子のレベルで説明されることに衝撃を受けました。さらに、遺伝子が生き物の性質を決めていること、遺伝子の情報とはDNAのヌクレオチドの並び順であることにも強い衝撃を受けました。生物にも機械と同じようにしくみがあり、それは現代でも調べて理解することができるのだとわかり、もっと生物の勉強がしたいと考えるようになりました。

    私が大学4年生のときに、初めて真核生物(酵母)のゲノムが解読されました(その生物がもつDNAの塩基配列がすべて明らかになった)。大学院在学中にはヒトや私が研究材料にしていたシロイヌナズナのゲノムも解読されました。ゲノムの解読は生物の研究にコンピュータを使った解析技術を要求するにようになりました。バイオインフォマティクス(生物情報学)という言葉が登場したのは20世紀の終わり頃でした。

    私は中学・高校のときにほんの少しコンピュータプログラミングをかじり、コンピュータに興味を持っていました。農学部の教育課程にプログラミングはありませんでしたが、大学のプログラミング講習を受けに行きました。同時に、パソコンを買ってもらって家でもプログラミングをしていました。そういう私の趣味は特技になり、生物学のあり方が変わる時代に強みになっていきました。

    今、私はmRNAのスプライシングに興味をもち、研究を行っています。高校の生物基礎や生物の教科書を開けば、mRNAがつくられるしくみや、それからイントロンが除かれるスプライシングという現象が当たり前のように書かれています。でも、mRNAが発見されたのは1950年代後半、イントロンが見つかったのは1977年です。ニュートンが運動の法則を発見したのが17世紀後半と300年以上前であることを考えると、生物の教科書に載っていることはとても新しいことばかりです。だからこそ、今大学で研究をしていても新しい発見に出会うことができます。

    生物が生きている新しいしくみを発見し、その感動を皆さんと分かち合いたいと待っています。