ワクワク好奇心研究室 Vol.11 

お知らせ

    山本和男先生 工学部電気電子システム工学科

    先生は雷でものが壊れないようにすることを研究されているのですね。

    ― 例えば、鉄道ですが、夏の雷の多い時期、雷が鉄道や鉄道システムに雷が落ちて電車が停まった経験をした人もいらっしゃるかもしれません。昔は少なかったのですが、最近は電気電子機器が増えて、そのような事象が増えているので、どうやって雷から守るかの研究をしています。

      風車への雷被害(私蔵)
      風車への雷被害(私蔵)
      風車への雷被害(私蔵)

    昔はあまりなかったのに増えてきたとのことですが。

    ― 昔はどちらかというと機械で動くものが多かったのです。例えば自動車ですが、昔はエンジンと駆動するギアなど機械的なものが主でしたが、今は衝突安全システムや、様々な電子機器が車の中に使われて、雷など大きな電圧や電流で壊れることが増えているのです。

    我々の生活の身の回りを見るとほとんど電気で囲まれています。

    ― 皆様の使われるエネルギー源がほぼ全て電気になっているので、雷に影響を受けやすい環境になっています。

    雷の構造はどうなっていますか?

    ― 雷に必要なのは上昇気流です。例えば、地上付近で温められた空気は、夏の夕方寒気が上空に入ることによって移動します。これは空気が温かい所から冷えている所に流れていくことによって、そこに上昇気流が発生し、その時水分も一緒に上昇していきます。小さい氷の粒と大きい氷の粒が擦れ合います。小さい氷の粒にはプラスの電気、大きい氷の粒にはマイナスの電気が帯電してラインを形成し雷雲を形成します。

    雷はどこを目掛けて落ちてくるのでしょう?

    ― 雲に、プラスかマイナスの電気が帯電すると、地上にはそれとは反対の電気が現れます。雲と地上に溜まった電気により、雲と地上との間の“電界”が大きくなり、この電界の大きさがある値を超えると放電が発生します。これが雷です。冬に衣類と皮膚の摩擦で人の体に電気が溜まり、その状態でドアノブを触ろうとした時に放電が発生することがありますが、その現象によく似ています。

    落雷の種類

    飛行機に乗っていると雷が落ちないか心配しています。

    ― 一旦上空に上がってしまうと積乱雲を避けて飛行しますが、空港の周辺の離着陸の時は、そこに雷雲があっても燃料の問題があるので待つということはなかなかできません。この離着陸の時に飛行機が雷の通り道になることが多いのです。通り道になった時に、多くの電気電子機器を抱えている飛行機が壊れないようにする研究もしています。昔の忘れてはならない教訓があります。飛行機は胴体や翼の中に燃料がありますが、雷によって放電が発生して、燃料に引火して飛行機が落ちた事故がありました。そこから飛行機の雷対策が重要視されるようになって今に至ります。現在は全く心配することはありません。

    近年の再生可能エネルギーにも深い関わりがありますね。

    ― 太陽光発電が普及したことで、これによって太陽光発電が多くの電気を発生させる環境が構築されました。太陽光発電は天気の良い日に発電しますが、曇や雨の日でも電気を発生させる必要があります。その点、風力発電は、風が強い時、天気が悪い時でも発電をするので、風力発電や他の再生可能エネルギーも普及させないといけないという発想から、研究を通して普及をサポートしています。

    風力発電を雷から守る研究を主にされていますが、これからの日本ではこのご研究は大切なものになってくると思います。

    ― 風力発電は、他の再生可能エネルギーよりも安く電気を発生させることができ、最近では風車が大型化しており、効率も良くなっていて、100メートルを超えるようなものが開発されています。

    風車の雷被害

    それは陸上にあるのでしょうか?

    ― 秋田県の海岸沿いなどは風車が見えない場所がないほど建っています。大きな建物は雷の標的になりますので、雷対策は欠かせないものになっているわけです。我々研究グループは風車をなんとか雷から守ろうと日夜努力しているのです。

    秋田県海岸沿いの風車風景(私蔵)
    秋田県海岸沿いの風車風景(私蔵)
    秋田県海岸沿いの風車風景(私蔵)

    雷から守るにはどうしたら良いのでしょう?

    ― 大地に上手く雷のエネルギーを逃してあげることが大切です。“いなす”のです。風車のブレード(羽)の先端は雷を受けるためにレセプターという金属がはめ込まれています。そこで雷を受けて、ブレードの中に金属の導線が設置されていて、そこを通してタワーを介して上手く大地に雷を逃がす仕組みになっています。

    風車・自動車・航空機・鉄道を雷から守るために、AIの技術を使ったり、データを収集する装置を作成したり、それぞれのキーワードに合わせて様々な事をしています。

    風車の落雷対策基本の図

    ゼミの学生がいると思いますが、テーマはいかがでしょうか?

    ― 全員違ったテーマで取り組んでいますが、お互いが相談しあい、高めあって、チャレンジし合う研究室を作れたらなと思います。

    先生が学生の頃、触発された指導教員がいらして、その先生の勧めでカナダに留学に行かれたとのことですね。

    ― 世界から見た日本や世界から見た他の世界など、電気工学という枠を超えて様々な見方をして、それを研究に活かしていこう!という研究室だったので、当時の指導教員(雨谷昭弘先生)の影響は大きかったと思います。

    同志社大学大学院時代の恩師雨谷先生と仲間
    (私蔵)

    カナダ留学時代のサッカーチームにて(私蔵)
    カナダ留学時代の友人とのキャンプにて(私蔵)

    そのご経験を先生の研究室でも活かしていることがありますか?

    ― 研究成果がある程度できると色々なところで学会発表を行ってもらうようにしています。コロナ禍では難しかったのですが、昨年,今年と10名以上の院生が海外で学会発表を行いました。

    先生は元々サッカー選手でもあって、中部大学ではサッカー部の部長ですね。

    ― 地域の子供達に昔からサッカーを教える機会があり、小学生からサッカーを通してどの様に成長していくかにも興味を持っています。土日は子どもたちと戯れています。今、大学でサッカー部のサポートをしていますが、学生たちが小学生・中学生時代にどの様に成長した結果、大学生になったのかを知ることは、教員としての貴重な経験となっています。

    サッカーを子どもたちに教える先生

    インタビュアー感想:
    幼い頃から怖いながらも雷は嫌いではなくワクワクしたものです。大きな風車をも壊してしまうエネルギーの前に、自然界の大きな力を感じざるを得ません。どのようにしたらそのエネルギーの逃げ場を作り、建物、飛行機、鉄道などの電気電子機器を守れるか、電気がないと生きていけない私達の生活に必須の基本的なご研究だと認識しました。

    山本 和男
    工学部 電気電子システム工学科 教授
    専門分野:電力工学、高電圧・大電流工学

    中部大学について