見えない電気の“イメージづくり”から“ものづくり”へ

お知らせ

    工学部電気システム工学科
    准教授 田橋 正浩

    電気システム工学科において、基盤となる科目に電気回路と電気磁気学がある。これらの科目で取り扱う電気(電子)は目に見えないため、いかに頭の中でそれをイメージし、数式に置き換えることができるかが重要になってくる。ところが近年入学してくる学生のほとんどは、これまでにものに触れる“実体験”がなく、ただただ詰め込むのみの教育を受けてきたのではないかと思う。また一方で、身近にある家電製品のほとんどは“ブラックボックス”と化していて、その中身は全く見えなくなっている。そのため、初めて電気を学ぶ者にとって電気工学は敷居の高い学問であるかのように思われがちである。

    そこで私の担当する講義や学生実験では、基本的な電磁気現象をコイルや磁石を用いた簡単な実験装置で実演している。例えば、電気回路や電気磁気学の教科書を開くと、そこにはコイルと磁石を用いた発電機の模式図が載っている。発電機を回すときれいな正弦波電圧が発生するかのように書いてあるが、果たして本当だろうか?ほとんどの学生は発電機の原理を学習するだけで、わざわざこれを作製し、なおかつ発生する電圧の波形を確認したことはないだろう。そこで簡単な模型を作製し、その電圧波形をスクリーンに映し出すと、多くの学生から「初めて見た」「理論の通りにきれいな正弦波を発生させることは難しいことが分かった」などの声が聞かれた。難しい数式や理論も目で見て初めてイメージすることができる。このイメージが膨らむことで、“楽しく学ぶ”ことができるだけでなく、“深く理解する”ことができるのではないだろうか。一方で、実際のものづくりは理論の通りには簡単にいかないことを学び、ものづくりの奥深さを感じてもらえれば、社会に出てから大きく成長できるものと強く信じている。

    ANTENNA No.96 (2010年2月)掲載

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