ディベートしよう!

お知らせ

    人文学部心理学科
    准教授 小塩 真司


    「学生は発言しない」「話し合うように言っても話し合わない」 「前に出て発表したがらない」といった経験は、大学の教員であれば多かれ少なかれしているだろう。 「だから最近の学生は…」と言いたくなる気持ちも分かる。 だったら、絶対に話し合いをしなくてはならない状況、発表しなくてはならない状況をつくって、 学生を徐々に慣らしていったらどうなるだろうか?という発想で運営している授業がある。

    もともとこの授業は発達心理学の英語文献講読を行うものだったのだが、受講生全員が参加できる 仕掛けができないかと考えて現在の形に変化していった。 最終的な目的は、発達心理学に関連する題目について賛成側と反対側に分かれ、1週間の準備期間を 経てグループ対抗で立論・質疑・反駁(はんばく)からなる本格的なディベートを行い、 審判役の学生が勝敗を判断する、というものである。

    とはいえ、いきなり「ディベートしてください」と言っても無理なので、まずは発言の練習から始める。 学生をくじ引きでグループに分け、身近な題目(たとえば「中部大学は良い大学である」など)について 発言を求める。 最初のハードルをできるだけ低くするため、台詞の枠組みも提示し、枠組みに沿って発言するように促す。 さらに、「この授業の間だけは、何を発言しようと、誰も悪く思う人はいない」と伝えることで発言を促していく。 そして2~3週間の練習のあと、徐々に本格的なディベートの練習へと進む。 最初は簡単な題目について短い時間で即座に自分の考えを述べることができるように練習し、次第に時間を 延ばしていく。

    このように練習を重ねると、最初は一言発言するのがやっとだった学生も、本番のディベートで自分の考えを 堂々と言うことができるようになっていく。 ディベートで負けるのは本当に悔しいらしく、1週間まじめに文献にあたって準備するようになる。 私にとっては、学生の変化を見られることが楽しみである。

     ANTENNA No.90 (2009年2月)掲載

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