新しい学習スタイルへのチャレンジ

お知らせ

    工学部情報工学科
    准教授 藤吉 弘亘

    近年、知のアーカイブとオープン化という理念の下に、講義映像の収録や配信、さらにはその関連情報のインターネット上における公開が活発化している。コンテンツ配信サイトiTunes U では、
    MIT 等の全米の大学の講義が無料で一般公開されている。これは世界的な潮流である。そこで、ポッドキャスティングを利用して、2006年度から私が担当する講義「画像情報処理」の映像配信を開始し、講義の補助教材の1つとして活用している。とはいえ、開始当初は講義映像を誰でも閲覧できるようにすることに対して躊躇したが、4年間続けてみたところ、いろいろなプラスの効果を体感することができた。

    講義配信を利用した学生に、アンケート調査をしたところ、復習に使える、欠席や試験勉強の際に手助けになった、板書にはなかった先生の説明を再度聞ける、書き逃した板書を確認することができた、知識情報を共有できて良い等の回答が得られ、否定的な意見はなかった。また、期末試験の結果、講義映像を視聴した学生の平均点は視聴しなかった学生に比べ8点高く、視聴回数が多い学生ほど高得点であった。これは、従来の学習スタイルに、いつでもアクセスして閲覧できる講義映像を加えることで、理解できなかった個所を何度も繰り返し視聴することが自主学習の助けとなり、復習の効果も上がったものと考えられる。さらに、学生が卒業後、履修した科目を再度学習する必要性が生じた時に、学生時代の講義映像の閲覧は知識の呼び戻しの手助けとなり、卒業後も大学とつながる良い機会になる。

    また、学生だけでなく教員にもメリットがある。私の場合、あらかじめ準備した講義ノートをベースに講義を組み立てているが、毎年同じ講義を担当しているのに、いざ新学期になると1年前にどのように説明したかを忘れてしまうことが多々ある。その際に、1年前の講義映像を前日に閲覧することで、ノートだけでは思い出せない細かな言い回し等の講義のディテールを確認することができる。

    昨今では、電子書籍リーダーKindleやiPad 等の新しいハードウェアの発売や、Twitter やUstream 等の新しいインターネットサービスにより、新しい学習スタイルが芽生えようとしている。私が着任した2000年は21世紀の始まりであったが、10年が経過した2010年になって、ようやく21世紀の幕開けを肌で感じ始めている。情報技術による教育の進化を教員自ら楽しみ、学生と共有していきたいと思う。

    ANTENNA No.98 (2010年6月)掲載

    中部大学について