ディプロマポリシー(DP) 保証の難しさ

お知らせ

    工学部都市建設工学科
    教授 平澤 征夫

    中部大学ホームページの「情報公表」には、今年度から「3つのポリシー」が載せられている。ディプロマ(D)、カリキュラム(C)、アドミッション(A)の3ポリシー(DP、CP、AP)である。工学部では、このうちのDPに関して以下の4分野に分けて示している。すなわち、「知識・理解」「思考・判断」「関心・意欲・態度」「技能・表現」である。私の経験からこの中で最も重要かつ教育困難な資質は3番目の「関心・意欲・態度」であると考えている。それは、これらが人間の「心」に関係しているからである。関心を持たせることは可能である。意欲を出させることも可能である。態度を改めさせることが最も難しい。心が変われば態度が変わる。すなわち、心を変えさせなければならないからである。教師の目標は人間を育てることであり、「人のこころ」を育てることにあると信じている。そして、それを伝えることが使命である。

    東日本大震災で、自分を大切に育ててくれた、大好きな祖母が亡くなった小学生がいた。悲しんでいるその小学生にインタビューした記者がいた。「今、おばあさんはどこにいると思いますか」と。しばらく考えた後、彼女は答えた。「家族みんなの心の中に」と。

    教えなくとも人は悟ることができる。過酷な状況がそれをさせたのかもしれない。でも、本当に愛していれば心を伝えることはできる。おばあさんは天国で喜んでいるだろう。私は信じたい。教師として人間の教育を心掛けている限り、心は伝えることができると。

    さて、大学で私が通常行っている残り3分野のDP教育方法は、ありふれた内容である。

    • 板書はきれいに分かりやすく。
    • 説明は流れを考えて理解しやすいように。
    • 質問を受ける(良い質問は褒める)。
    • 詳細説明はプリントを配付する。
    • 重要項目を精選して重点的に説明する。
    • 計算問題は例題を示し、同様の問題を演習させる。

    などである。最も重要と考えているのが、最初に述べた「関心・意欲・態度」を教師自身が示し、伝える努力をすることである。若いうちは将来の夢と情熱を学生にぶつけ、老いては、夢にチャレンジした経験を含めて、なお、その情熱を態度で伝えることである。子どもは親が果たせなかった夢を追う。

    ANTENNA No.112(2012年10月)掲載

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