専門ゼミナールにおける試み アントレプレナー育成論を実践する

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    経営情報学部経営情報学科
    准教授 趙  偉

    この不況の中で、学生はどのような力を身に付ければ、厳しく長い就職活動を乗り越えていけるのだろうか?この問いの答えを求めて、私は実務家や経営者に会うと必ず「どのような学生を求めているか?」を聞いた。彼らは「協調性、積極性、思考力」という学生の素質と能力を求めているという。どのようにすればそれらを身に付けることができるのかを考え、「アントレプレナー育成」というテーマで3年次の専門ゼミナールを展開した。

    経済学者シュンペーターは「アントレプレナー」を「イノベーションを遂行する人」と定義した。しかし、ここでいう「イノベーション」とは技術革新だけを指すわけではない。技術に加えて新しいライフスタイルの提案や組織変革なども重要なイノベーションである。またドラッカーは「アントレプレナーシップ」について、「気質ではなく行動である。しかも、その基礎となるのは直感ではなく、原理であり方法である」と論じている。

     私のゼミナールでは「これまでに学んだことを社会事業として実践することによって学習効果を高め、個人の協調性、積極性と論理的思考力を身に付ける」ことを目指した。すなわち、①学生は自らのやりたいこと、できること、社会的に求められていることを考え、②社会事業の企画、新製品の開発や新サービスの開拓を行うこととする。具体的には、1.学生たちはグループに分かれて「バーチャルカンパニー」を立ち上げる。2.実際の企業が取り扱う商品やサービスを改善するビジネスプランを提出する。3.「バーチャルカンパニー」では、アイデア創出、テストマーケティング、事業計画書の作成を行う。4.名古屋市新事業支援センターが主催する「学生ビジネスアイデア」に応募する。

    学生たちはこのような体験学習を通じて、グループ作業における協調性を学び、マーケティング調査やビジネスプラン作成のために、自分たちにもできることがあるという、今までとは違った積極性を発揮し始めているようだ。問題解決能力が向上したことで、何事もやってみる、できるという意識からプラス思考でさまざまなアイデアを出すようにもなっている。こういった経験は実社会に出る前の準備として学生たちに役立ってくれていることと思う。実社会に出てからの彼らの活躍を大いに期待したいと思う。

    ANTENNA No.103 (2011年4月)掲載

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