研究を通した教育

お知らせ

    応用生物学部環境生物科学科
    准教授 長谷川 浩一

    わが研究室でいま盛り上がっている研究の1つが「ゴキブリと寄生虫の共生メカニズムと進化」です。「ゴキブリなんてとんでもない、ましてその寄生虫なんてどうかしている」というのが一般的な人の当たり前の反応だと思いますし、われわれも十分承知しています。なぜこんなテーマを研究するかは単純で、①寄生虫問題を生物学的にアプローチするためにはゴキブリを選ぶ必要があるから、②世界中でほとんど研究されていなかった視点(材料・実験系)のため大発見の宝庫であるから、③ゴキブリ対策は社会的ニーズが高いから、そして何より④こうしたことを理解しつつこの研究テーマを取り組む学生や研究員たちが、とても楽しみながら大きく成長してくれるからであります。

    ところで、私が担当する講義は主に入学したばかりの環境生物科学科1年生を対象としたものが多く、学生たちは緊張感を持って授業に臨みしっかり私の話を聞いてくれるため、良い雰囲気の中で授業を進めることができます。「生物が好き」というモチベーションは大体皆が共有しているはずですので、「身近な生活に照らし合わせて生物学を考える」というステップへと比較的スムーズに進めることができます。主体的に考えられるようになり、講義で聞いたことを基に、自分の興味あるいろいろな現象についても自主的に観察できるようになれば、質問もたくさんできるようになります。その後、3年生の秋学期に各専門分野の研究室へと配属され、1年半の研究を終えて卒業論文を書き上げたころには、今まで避けてきて目を背けてきたことや、全く考えたことのなかった(知識がなかったため見えなかった)大切なこと等にもしっかり対面し、そういったことに取り組み社会を支える先輩方(真っ先に両親でしょう)への敬意を抱き、そして自身でも果敢に挑戦するパワーを身につけ、責任とやりがいを感じながらその行動に喜びを感じられるようになっているはずです。一生懸命研究すると、社会に出てからもいろいろな場面で活躍できる、「あてになる人間」へと成長しているはずです。学生たちには修士まで勉強・研究を続けることをお勧めします。

    私の講義では特別な工夫も、研究について話をすることもほとんどありません。しかし、わが研究室メンバーと共に取り組む面白い生物学研究こそ、私の授業づくりのあらゆるベースです。設備が整い、さまざまな分野で活躍されている先生方が身近にいらっしゃる応用生物学部は、まさに研究を通した教育を実践できる、素晴らしい基盤が整っています。

    ANTENNA No.138 (2017年10月)掲載

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