「孤学」ではなく、「共学」を目指して

お知らせ

    人文学部歴史地理学科
    准教授 篠宮 雄二

    私が最も重視している授業が、3年生の『歴史学演習(A・B)』です。 春学期の『歴史学演習A』では、活字化された江戸時代の古文書をテキストに、それを正確に解釈するトレーニングを徹底的に行います。発表の担当は決めませんので、全員が授業1回分の史料解釈を、辞書や専門書などをひっくり返しながら予習し、授業に臨みます。秋学期の『歴史学演習B』では、各学生にくずし字で書かれた異なる史料1点を与え、その史料に関連するテーマを学生自らが設定し、報告することを行っています。 ここで最終的に私が要求していることは「なぜ担当した史料に示された歴史的実態が存在し得たのか?」という点にあります。従って辞書や概説書に書かれた歴史的な「知識」を羅列した報告は、当然「ダメ出し(=再報告)」となります。学生たちは専門書や論文、関連する史料などを求め、場合によっては他の大学図書館や史料館に足を運ぶことになりますが、他の学生の発表と議論に接しながら、また自らも繰り返し発表するなかで、徐々に私が要求する発表の質に近づいていきます。

    私の『歴史学演習』はどこの大学でも行われているオーソドックスな史料演習の授業形態です。もし違う点があるとすれば、学生に対して「孤学」ではなく、妥協・依存を前提としない「共学」を強く指導している点かもしれません。ただしこの「共学」、単に教員が唱えただけでは実現にはつながりません。そこで私の『歴史学演習』=ゼミで重視しているのが、夏休みに実施するゼミ合宿(旅行)や授業外に実施する各種交流会です。こうしたいわばイベントを介しながら、「まずは学生同士が学ぶ、そして教員と共に学ぶ」という土壌づくりをしています。

     最後に、これまで『歴史学演習』のテキストはその年のゼミ生たちの能力を判断しながら毎年変更していました。しかし、これは若い学生たちの力量に対する判断ミスであったと反省しています。むしろ学生は難解で質の高い史料と格闘する中で、その能力を確実に伸ばしていくことを、学生たちが私に教えてくれました。また、ゼロからのスタートです。

    ANTENNA No.102 (2011年2月)掲載

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