脳を知って脳を鍛える

お知らせ

    工学部情報工学科
    教授 平田 豊

    私の講義はまず、脳の活性化から始まる。私が2桁の数字を3つ順に読み上げ(例えば、82, 36, 57)、その後学生はそれを逆順に書き出す(57, 36, 82が正解)。これを10問。計算や論理的思考に不可欠な前頭葉の短期記憶回路等を活性化する頭の体操である。

    講義はパワーポイントで行う。複雑な計算アルゴリズムや式の物理的意味などを、分かりやすくアニメーションで作成し、繰り返し見せる。
    学生の集中力が途切れてきたのを察知したら、再び脳の活性化を試みる。いろいろ試した中で有効だったのは、錯視画像を見せ、それにちなんだ問題を出すことであった。

    眠気が覚めたら講義再開。講義中盤からはできるだけ多くの問題を出し、口頭や白板で解答させ、その内容に応じて点を与える。また、習得した知識が机上の空論にならないよう、毎回講義の最後はコンピュータを使った演習にあて、優秀解答者に点を与える。点をもらうことにより脳の報酬系が刺激され、やる気と悦びの感情が湧き、原因となった行為を持続する動機が生まれる。

    得点を狙う学生は予習をするようになる。そのために、次回の講義資料を講義用に開設したWeb サイトから事前にダウンロードできるようにしておく。

    講義後は、学習内容を長期記憶として定着させるため、学生たちに復習を促す。そのために、講義の概要、重要と思った点、感想・考察をブログとして毎週上記Web サイトに各自投稿させる(受講生なら誰でも互いに参照可)。この半強制復習制度は学生たちにはすこぶる不評であるが、導入前と比べて不合格者が激減した図を見せると、彼らも納得している[図]。

    ブログの投稿と同時に、講義内容の理解度に関するアンケートを毎回同Web サイトで実施する(無記名)。この他、自分の講義を最もシビアに評価してもらう方法として、毎回の講義に値段を付けてもらうアンケートも実施している(無記名)。たまに1,000円以下という厳しい投票もあるが、priceless への投票は教員の報酬系を刺激する。

    ANTENNA No.92 (2009年6月)掲載

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