国際関係学部国際学科
教授 澁谷 鎮明
以前、他大学で「韓国文化論」の集中講義をした際に、教室の環境が整っていなかったために失敗をしたことがある。初日に受講生があふれるほど小さく、プロジェクター設備さえない教室を割り当てられた結果、後に教室変更はできたものの、受講生も私自身も最後まで不満を口にする険悪な雰囲気になったのである。教室の割り当てなどは人のせいにしがちであるが、教員が下見をしておけば済む問題である。それ以来私は、毎学期初めに下見のため現場に足を運んでいる。
その際には、教室の使い勝手や教室の規模を確認し、機器を実際に動かしてみることも多い。私は授業中画像を提示しつつ板書もするが、講義室の中には黒板をふさぐようにプロジェクター用のスクリーンが降りてくるものがある。ここで授業をすると、頻繁にスクリーンの上げ下げが必要となり、受講生にも教員にも煩わしい作業が増える。また窓にカーテンではなくブラインドが設置されている教室は、天気によっては非常にスクリーンが見にくくなる。下見の結果、必要であれば教室の変更をお願いすることもある。
教室の規模も重要である。経験上、試験座席の人数程度が授業をするのにもベストではないかと考えている。こうすると、受講生はやや余裕をもって座れるし、「韓国語入門」等の語学の授業では小テストをするので、カンニング防止のためにも席に余裕が必要である。筆記試験をする科目の場合も、試験座席数と同程度であれば試験の際にわざわざ別の教室に移動しなくとも良い。
個人のこだわりの範疇に入る問題ではないかとのご意見もありそうだが、授業が見やすく聞きやすいこと、受講環境が良いこと、スムーズに授業が展開されることは重要であるように思う。教室の環境が悪く、スムーズではない授業は、いきおい私語も多くなりがちである。授業内容や教授法、あるいは教員の能力ではない部分での努力で、いわば「外側」から授業を改善することも一つのやり方と思うが、いかがだろうか。
ANTENNA No.134 (2016年10月)掲載