学生をアシストする「問いかけ」 ― 「日本語スキルA」を通して ―

お知らせ

    現代教育学部
    講師 千葉 軒士 

    私が主に担当する授業「日本語スキルA」は、正しい文法理解に基づき、自らの考えを人にわかりやすく伝える能力、言い換えれば「大学生が研究活動を行う上で必要な日本語の運用能力」の基礎を学ぶ科目として、1年生を対象に開講されています。扱う項目は多岐に渡りますが、学生が半期の授業を通じて、少しでも多くの能力を確実に定着させられるよう、担当者全体で思案を重ねています。

    この授業において私が特に大切にしていることは、とにかく学生へ「問いかける」ことです。「あれを覚えましょう」「これをやりましょう」といった指示は出しません。なぜなら、この授業で学生が学ぶ「言葉」というものは、常に変化する存在であり、そうである以上、正解が常に一つとは限らないからです。だからこそ、時と場合に応じた適切な言葉を、学生自身の力で選び出せるよう、自ら考える力を養わなければいけません。覚えるではなく、「問いかけ」て考えさせます。例えば、「敬語」。この場面でどういう言葉を選べば相手を不快にさせないでしょうか。例えば、「スピーチ」。どのように話せば聞き手が自分のスピーチに興味を持ってくれるでしょうか。こちらから発するすべての「問いかけ」に共通するのは、「どうすればよりよい表現が可能になるか」、その考察を促すものだということです。このこちらからの「問いかけ」の答えを学生が自ら考えていくことで、表現が少しずつ洗練されていくと感じています。

    私が「日本語スキルA」の授業で行っていることは、いわば学生の考察のアシストです。授業で出会う学生が、この先、研究活動を行っていく過程で、少しでも自分の考えを他者に上手に伝達できるように、これからも「問いかけ」を続けていきたいと思います。何を学生に教えるのかではなく、何を学生に「問いかける」のか。これを常に自分自身に「問いかけ」て、日々授業の準備をしています。

    ANTENNA No.146 (2019年10月)掲載

    中部大学について